省人化ライン構想の作業分解とは?
―― 人作業・自動機・搬送・検査をどう切り分けるか
こんにちは、技術コンサルのTです。
今回は、省人化ラインを検討する際に重要になる「作業分解」について書いてみたいと思います。
製造現場では、「人手作業を自動化したい」「作業者を減らしたい」「搬送や検査を設備化したい」といった相談がよくあります。人手不足への対応、生産性向上、品質の安定化、作業負荷の低減など、省人化を検討する理由はさまざまです。
ただし、省人化を考えるときに最初から「何人減らせるか」だけを見てしまうと、設備導入後に思ったほど効果が出ないことがあります。
ロボットや搬送機、検査装置を入れたものの、ワーク供給は人が頻繁に行う必要がある。異常が出るたびに作業者が呼ばれる。品種切替や初品確認に時間がかかる。結果として、設備は動いているのに現場負荷があまり下がらない。
こうしたことを防ぐには、設備を決める前に、今の作業を細かく分解し、どこを自動化し、どこを人が担当し、どこを改善すべきかを整理することが重要です。
ラインビルダーやFAインテグレーターに求められるのは、単に自動機を入れることではありません。人作業、自動機、搬送、検査、保全、異常復旧まで含めて、生産ラインとして省人化が成立するかを考えることです。
■ 省人化は「人を減らすこと」から考えると失敗しやすい
省人化という言葉から、まず作業者数の削減をイメージする方は多いと思います。
もちろん、作業人数を減らせるかどうかは設備投資を検討するうえで重要なポイントです。ただ、製造現場の作業は、単純に「人がやっている作業を機械に置き換える」だけでは整理できません。
たとえば、ある作業者が担当している工程の中には、次のような作業が混在していることがあります。
・ワークを取り出す
・向きをそろえる
・治具にセットする
・ボタンを押す
・加工後の状態を目視確認する
・NG品を分ける
・次工程へ運ぶ
・異常時にワークを取り除く
・品種切替時に条件を確認する
このうち、ロボットで置き換えやすい作業もあれば、画像検査やセンサで判断できる作業もあります。一方で、ワークのばらつきが大きい、判断基準が曖昧、前後工程との調整が必要といった理由で、すぐには自動化しにくい作業もあります。
そのため、省人化ラインの検討では、「この工程を自動化する」と大きく捉えるのではなく、作業を一つひとつ分解して見ることが大切です。
■ まず現場作業を分解する
作業分解では、現在の工程を動作単位で整理します。
どの作業に時間がかかっているのか。どの作業が作業者の経験に依存しているのか。どの作業で品質ばらつきが出やすいのか。どの作業が身体的な負荷になっているのか。どのタイミングで作業者が設備を見に行っているのか。
こうした内容を整理すると、省人化の目的が見えやすくなります。
たとえば、作業者の歩行距離が長いことが課題であれば、搬送の自動化や部品供給方法の改善が有効かもしれません。重量物の取り扱いが課題であれば、ロボットやリフター、ハンドリング治具の検討が必要になります。検査のばらつきが課題であれば、画像検査や測定器の導入だけでなく、検査後のOK品・NG品の流れまで考える必要があります。
省人化の目的が曖昧なまま設備仕様を決めると、設備は完成しても「結局どこが楽になったのか分かりにくい」という状態になりがちです。
逆に、作業分解によって課題が明確になっていれば、設備メーカーとしてどの部分を機械化すべきか、FAインテグレーターとしてどの設備同士をつなぐべきか、ラインビルダーとしてどこに人を残すべきかを判断しやすくなります。
■ 自動化しやすい作業と、人が残りやすい作業
すべての作業が同じように自動化しやすいわけではありません。
比較的自動化しやすいのは、条件が安定していて、動作や判定を定義しやすい作業です。たとえば、決まった姿勢で流れてくるワークの搬送、一定位置への供給、決まった条件での測定、OK品とNG品の振り分けなどは、設備化を検討しやすい領域です。
一方で、人が残りやすい作業もあります。
たとえば、ワークの状態にばらつきが大きく、都度判断が必要な作業。品種ごとに微妙な調整が必要な作業。異常時に複数の状況を見て判断する作業。外観や手触りなど、人の感覚に頼っている作業。
こうした作業を無理に自動化しようとすると、設備が複雑になり、コストや立ち上げ期間が大きくなることがあります。また、量産後の保全やトラブル対応が難しくなり、稼働安定化に時間がかかる場合もあります。もっとも、この領域こそ昨今のAIや画像処理、データサイエンスの活用領域ではありますが。
大切なのは、まずは「人を残すことが悪い」と考えないことです。人が判断した方が安定する作業は人に残し、繰り返し作業や重作業、確認漏れが起きやすい作業を設備で支援する。こうした切り分けも、省人化ラインの重要な設計判断です。
■ 搬送・検査・供給を分けて考える
省人化の相談では、「この工程を自動化したい」と一括りで話が始まることがあります。
しかし実際には、工程の中に搬送、供給、位置決め、加工、検査、排出、記録といった複数の要素が含まれています。それぞれで課題も設計ポイントも異なります。
搬送であれば、ワーク姿勢、停止位置、受け渡し条件、バッファ、前後工程との信号連携が重要になります。供給であれば、部品の向き、補充頻度、空箱回収、作業者動線、供給切れの検知などを考える必要があります。検査であれば、判定精度だけでなく、NG品の排出、再検査、検査結果の記録、前後設備への信号連携まで含めて設計する必要があります。
このように分けて考えると、必ずしも工程全体を一気に自動化しなくても、省人化効果を出せる場合があります。
たとえば、作業者が頻繁に歩いて部品を運んでいるなら、まず搬送や供給の改善だけでも現場負荷を下げられる可能性があります。検査そのものは人が行うとしても、検査結果の記録やNG品の隔離を設備側で支援すれば、品質管理やトレーサビリティの改善につながることもあります。
ライン設計では、どこを完全自動化するかだけでなく、どこを半自動化するか、どこを作業支援にするかという視点も重要です。
■ 人作業を残す場合も、ライン設計の対象になる
省人化ラインでは、自動化する部分だけに注目しがちです。
しかし、人作業を残す場合、その作業もライン設計の一部として考える必要があります。
作業者はどこに立つのか。どの向きでワークを扱うのか。部品や治具は手の届く位置にあるのか。設備の扉やカバーを開けたときに作業スペースは確保できるのか。異常時に安全にワークを取り出せるのか。HMIの表示は分かりやすいか。
これらが整理されていないと、自動化したはずのラインでも、現場では使いにくさが残ります。
特に既設設備を活かしたライン改造では、既存の設備配置、作業者動線、配線・配管、保全スペースが制約になります。新しい自動機を追加した結果、部品補充がしにくくなったり、点検スペースが狭くなったりすると、日常運用で困ることがあります。
省人化は、単に人を減らすことではありません。人が関わる作業を減らすだけでなく、残る作業を分かりやすく、安全に、少ない負荷で行えるようにすることも重要です。
■ ラインビルダー視点で見る省人化ライン
ラインビルダー視点で見ると、省人化ラインのポイントは、設備単体の能力だけではありません。
ロボットが速く動くか。搬送機の能力が足りているか。検査装置の精度が出ているか。もちろん、これらは重要です。
ただし、生産ラインとして見ると、それぞれがつながったときに本当に省人化できるかが問われます。
ワーク供給が追いつくか。前後工程で待ちが発生しないか。異常時に復旧しやすいか。品種切替時に確認漏れが起きないか。保全担当が短時間で原因を特定できるか。作業者が迷わず運用できるか。
こうした点を設計段階から整理することで、立ち上げ後の手戻りやチョコ停を減らしやすくなります。
設備メーカーとして自動機を作る力、FAインテグレーターとして設備同士をつなぐ力、ラインビルダーとして生産ライン全体の流れを設計する力。省人化ラインでは、この3つの視点を組み合わせることが重要です。
■ まとめ:省人化の成否は、設備導入前の作業分解で決まる
省人化ラインを検討するときは、最初から「何人減らせるか」だけで考えるのではなく、まず現場作業を分解することが大切です。
どの作業が繰り返し作業なのか。どの作業が品質ばらつきにつながっているのか。どの作業が作業者負荷になっているのか。どの作業は人が判断した方がよいのか。
これらを整理してから、自動化、半自動化、作業支援、人作業として残す部分を切り分けることで、現場に合った省人化ラインを考えやすくなります。
省人化は、人を減らすためだけの取り組みではありません。生産性向上、品質安定、作業負荷低減、保全性、稼働安定化まで含めて、製造現場をより使いやすくするためのライン設計です。
Thermixでは、設備単体ではなく、生産ライン全体の流れ、作業者の動き、搬送、検査、制御、保全まで含めたラインづくりを大切にしています。自動化や省人化をご検討の際は、設備を決める前に、まず現場作業をどのように分解するかという視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。