タイ自動車工場|未来の量産ラインをつくる
自動車の生産ラインでは、「新しい設備を導入する」だけでなく、将来の量産ラインを見据えた試作ラインを立ち上げることがあります。今回ご紹介するのは、タイの自動車工場におけるピックアップトラックのフレームCO₂溶接ラインのプロジェクトです。設計、製作を担当した協力会社、施工メンバーの頑張りもあり、お客様から高評価を頂いた案件です。
対象となったのは、フレームの溶接工程。今回製作した設備は、そのまま量産設備として使用されるのではなく、現行ラインへ組み込まれる改造設備の試作ラインという位置付けでした。
つまり、「試作だから多少動けばよい」ではありません。試作段階で品質・生産性・作業性を十分に検証し、その成果を量産ラインへ展開することが求められます。
将来のラインを左右する重要な役割を担うプロジェクトだったからこそ、テルミックスの構想力・設計力・施工力、そしてプロジェクトマネジメント力が試される案件となりました。
シミュレーション環境を、自社の技術資産へ
設計面で大きなチャレンジとなったのが、新規導入のロボットシミュレーションソフトを適用した初めてのCO₂溶接ラインだったことです。
新しいツールは便利になる反面、実務へ適用するまでには多くの検証が必要になります。
シミュレーション方法を一つひとつ検証しながら、最適な運用方法を確立していきました。
ロボットの可動範囲や溶接姿勢、干渉確認などを繰り返し確認し、
「この手順なら精度良く検証できる」
という設計フローを構築できたことは、本案件だけでなく今後の案件にも活かせる大きな技術資産となっています。テルミックスでは、一つの案件を単なる納入実績で終わらせず、会社全体の技術力向上につながる仕組みづくりも大切にしています。
新しいお客様だからこそ、「標準」を理解するところから始まる
設備メーカーが変われば、設計思想も品質基準も変わります。
今回のお客様は初めてお取引するメーカーだったため、設備標準や設計ルールを理解することからスタートしました。さらに難しかったのは、新設ラインだけではなく、現行ラインにも独自の標準が存在していたことです。
メカ・電気ともに双方のルールを理解しながら設計を進める必要があり、「図面を描く」以上に仕様を正しく理解することが重要でした。一例として、設備据付の段階では治具色の違いが判明する場面もありました。いつも弊社をサポートしてくれている制作メーカー2社があるのですが、それぞれの治具色が異なり、並べて初めて気付いたのです・・・
最終的には関係各社で状況を共有し、お客様とも相談しながら対応方法を整理。設備全体への影響を最小限に抑えることができました。こうした出来事からも分かるように、海外案件では技術力だけでなくコミュニケーション力も品質の一部になります。
「これは誰がやる?」ではなく、「どうすれば間に合う?」
今回も、多くの問題が山積みでしたが、お客様とも密接に連携しながらプロジェクトを進めました。
例えば、
・一部購入品は納期リスクを考慮し、図面を取り寄せてテルミックス製作品へ切り替え
・現地SVで判明した不具合はテルミックスで図面化し、現地企業で製作対応
というように、
「担当範囲を守る」のではなく、そのときの最適な役割分担を考えて、どう間に合わせるか
に集中したものです。
ラインビルダーとして重要なのは、自社だけで完結することではありません。
パートナー企業を含めた全体最適を考え、納期・品質・コストのバランスを取りながら設備を成立させることです。
これもテルミックスが大切にしているインテグレーションの考え方です。
現場では、予定どおりに進まないことが当たり前
施工フェーズでは、設備を「図面どおり」ではなく、「現場で使える設備」に仕上げていきます。今回も出荷前立会いから現地SVまで非常にタイトなスケジュールで進みました。
特に電気工事の工程では、このままでは間に合わないという状況もありました。そこで施工チームは、工程を細かく見直し、人員計画も再構築。最終的には当初予定の約2倍の体制へ増強することで、スケジュールを守ることができました。
もちろん、人を増やせば解決するわけではありません。誰がどの工程を担当するか、若手にどこまで任せるか、ベテランがどこをフォローするか・・・そうした役割分担まで含めて考えることが、プロジェクトマネジメントです。今回、キーメンバーは協力会社での製造品質の作りこみに20日、顧客現地工場のSVでは1か月の滞在予定が仕様変更の対応もあり1か月延長。テルミックスらしく、泥臭く、品質を出しました。
現場で生まれる改善が、次の設備を強くする
現場では予定外の対応も少なくありません。当初想定していなかったスケジュール変更への対応もありました。それでも施工チームは、「まずラインを成立させる」という共通の目標のもと、一つひとつ対応していきます。
施工担当者は、「終始イメージどおりに進めることができ、イレギュラーもありましたが、非常に楽しく仕事ができました」と振り返ります。
これは決して楽な案件だったという意味ではありません。最後に設備が動く姿を思い描きながら、一つずつ課題を乗り越えていくことにやりがいを感じていた、ということです。
「次につながる設備」をつくることが、本当のゴール
テルミックスでは海外案件のたびに、パートナー企業との親睦会を開催しますが、今回もはっちゃけてしまいました。また顧客メンバーが当社に1か月間滞在することになり、常駐スペースを用意し、お客様や協力会社含め、日々、侃侃諤諤やりました。こうした日々のコミュニケーションが、お互いに相談しやすい関係をつくり、結果として設備品質にもつながっています。
施工担当者が最後に話していた言葉が印象的でした。「妥協せず、お客様に寄り添った設備ができた。そして、次につながる設備になった。」
今回の試作ラインは、最終的に現行ラインへ組み込まれ、量産設備として活躍していきます。
設備を納めることがゴールではありません。その設備が長く安定して稼働し、お客様の生産を支え続けること。そのために構想し、設計し、制作し、施工までやりきる。
テルミックスはこれからも、国内外の自動車工場で、生産技術・自動化・ロボット・制御を統合するラインビルダーとして、お客様に寄り添いながら、次のものづくりへ挑戦していきます。