国内製造業|新工場への生産機能移管を契機に、工場全体を再設計
― レイアウト、自動化、物流、コスト。将来を丸ごと構想する ―
今回ご紹介するのは、国内製造業のお客様に対し、新工場への生産機能移管を契機とした「将来工場構想」の策定を支援したプロジェクトです。
テーマは、単に「既存設備を新しい建屋へ移す」ことではありません。
現行の生産能力を維持しながら、物流動線を見直し、自動化・設備汎用化を進め、コストを低減する。さらに、将来の増産や製品構成の変化にも対応できる余地を残しておく。
つまり、今回テルミックスが一緒に考えたのは、設備の移設ではなく、これからの生産のあり方そのものでした。
建屋制約、生産能力、段階的な移設に伴う操業継続といった成立条件を整理したうえで、工場レイアウト、自動化・汎用化、生産設備投資、投資対効果、導入ロードマップまでを一体で検討しています。
■ 「どう移すか」ではなく、「移した先で何を実現するか」
今回のプロジェクトで、担当者が最も考え続けたのは、
「どうやって工場を移すか」ではなく、「移したことで、お客様にどれだけメリットを生み出せるか」
ということでした。
もちろん、設備を並べてレイアウト図をつくるだけであれば、そこまで難しい話ではありません。
しかし、新工場への投資は、お客様にとって非常に大きな経営判断です。
「設備がきれいに収まりました」だけでは、投資する理由にはなりません。
物流距離がどれだけ短くなるのか。
必要人員をどう考えるのか。
どの工程を自動化すれば効果が高いのか。
設備を汎用化することで将来どんなメリットが生まれるのか。
そして、それらの施策に対して、どれだけの投資が必要なのか。
こうした要素を一つずつ整理しながら、
「この工場なら、将来に向けて投資する価値がある」
と思っていただける構想へ落とし込むことが、今回のゴールでした。
■ 工場レイアウトは、単なる「設備配置」ではない
中でも特に考えがいがあったのが、レイアウト構想です。
レイアウトというと、「どこに、どの設備を置くか」という話に見えます。
少し専門的な話になりますが、実際にはレイアウトは、工場投資における“最大の変数”の一つです。
設備の位置が変われば物流動線が変わります。
物流が変われば搬送方法やバッファの考え方も変わります。
自動化のしやすさも、設備の汎用化も、将来の増設余地も変わる。
さらに、段階的に設備を移設するのであれば、「新工場をつくりながら、現在の生産も止めない」という視点も必要です。
だからこそ、テルミックスでは最初から一つの答えを決め打ちするのではなく、異なるコンセプトを持った複数のレイアウト案を作成しました。
それぞれについて、
- コスト削減効果
- 必要投資額
- 自動化のしやすさ
- 設備汎用化のしやすさ
- 物流・搬送の効率
- 作業性
- 保全性
- 将来の増産・製品変化への対応力
といった複数の評価軸で比較します。
「あちらを立てれば、こちらが立たない」というのが工場構想の難しいところ。
だからこそ、メリットだけを並べるのではなく、各案のメリット・デメリットを可視化し、お客様自身が納得して意思決定できる状態をつくることを大切にしました。
■ 自動化も、バッファも、「とりあえず入れる」では意味がない
工場刷新では、当然ながら自動化も大きなテーマになります。
ただし、テルミックスが考える自動化は、「人作業をできるだけロボットに置き換える」という単純なものではありません。
生産量、品種構成、工程能力、設備稼働率、物流、人員配置、将来計画を見ながら、
「どこを自動化すると、工場全体として最も効果が高いのか」
を考えていきます。
バッファ設計も同様です。
工程間の能力差を吸収するためにはバッファが必要ですが、大きければ良いわけではありません。仕掛品を増やせばスペースも在庫も増えます。
逆に少なすぎれば、前後工程の小さな停止が工場全体に波及してしまいます。
そのため、設備単体を見るのではなく、前後工程・搬送・物流まで含めてライン全体の成立性を見ることが重要になります。
これは、自動化ラインの構想・設計・製作・施工まで手掛けてきたテルミックスだからこそ持てる、生産技術視点の一つです。
■ まず必要だったのは、「今の工場を正しく知ること」
一方で、今回最も苦労したのは、実は将来構想そのものよりも、現状の生産実態を正確に把握することでした。
工場全体を刷新するのであれば、まず、
「現在、何を、どのくらいの能力で、どの設備と人と物流を使って生産しているのか」
を理解しなければなりません。
ただ、そのために必要な情報が最初からすべて整理されているとは限りません。
生産量、設備能力、工程、作業方法、搬送動線、ロス、設備配置――。
検討を進めていくと、
「この判断をするためには、このデータが必要だ」
「この工程は数字だけでは実態が分からない」
と、新しい論点が次々と見えてきます。
そこでテルミックスでは、まず何を分析すべきか、どの情報が必要なのかをこちら側で整理。そのうえでお客様と協議し、現地調査やヒアリングを重ねていきました。
現場に行くと、資料だけでは分からないことがたくさんあります。
「なぜ、この設備はここにあるのか」
「なぜ、この搬送ルートになっているのか」
「なぜ、この作業は人が行っているのか」
長年続いているやり方には、それぞれ理由があります。
そこを理解せずに「こちらの方が効率的です」と変えてしまうと、別の問題を生みかねません。
だからこそ、現場の方々と対話しながら、一つずつ理由を紐解いていきました。
■ 「データを分析する」のではなく、「何を明らかにするか」から考える
今回のプロジェクトを象徴するのが、
「データをもらって分析する」のではなく、「何を明らかにすべきかを定義するところから始める」
という進め方です。
限られた情報から仮説を立てる。
現場で確認する。
想定と違えば、もう一度考える。
これを何度も繰り返しました。
少し地味ですが、この作業を積み重ねることで、最初は仮説だったものが、徐々に確信へ変わっていきます。
その結果として出来上がるのは、単なるレイアウト図ではありません。
経営側が投資を判断するための材料です。
「この自動化なら、これだけの効果が期待できる」
「このレイアウトなら、将来の増産にも対応できる」
「この設備は汎用化した方が、中長期では有利になる」
そうした判断材料まで整理して初めて、工場構想が経営判断につながります。
■ 部門ごとの「良い工場」を、一つの物差しにする
もう一つ難しかったのが、意思決定の評価軸を揃えることです。
生産部門から見た「良い工場」と、保全部門から見た「良い工場」、経営側から見た「良い投資」は、必ずしも一致しません。
ある部門にとっては自動化率が重要でも、別の部門では保全性が重要かもしれません。
そこで、
「何をもって良い案とするのか」
を関係者と整理しました。
コスト削減、投資額、自動化、汎用化、作業性、保全性――。
異なる立場の方々が同じ物差しで議論できる状態をつくることも、今回のプロジェクトマネジメントにおける重要な仕事でした。
■ 設備だけではなく、「工場全体」を一緒に考えるラインビルダーへ
今回のプロジェクトでは、検討を進める中で、
「移管を考えるなら、このタイミングで工場全体を見直した方が良いのではないか」
という議論にも発展しました。
結果として、単純な移管計画にとどまらず、将来の生産体制まで見据えた構想へ検討範囲を広げています。
ここに、テルミックスらしさがあります。
私たちは、生産設備を単体で見るのではなく、前後工程を含めたラインとして捉えます。
さらにその視点を広げれば、工場全体を見ることができます。
メカ、電気、ロボット、自動化、搬送、設備設計、施工。
これまでラインビルダーとして培ってきた知見を組み合わせながら、必要であれば「何を調べるべきか」というところからお客様と一緒に考える。
与えられた範囲だけをこなすのではなく、プロジェクトの目的を達成するために必要なところまで踏み込む。
そして、最後まで一緒にやりきる。
「工場をどう移すか」ではなく、「移した結果、どれだけ強い工場になるか」。
設備をつくるところから、工場そのものを構想するところへ。
テルミックスはこれからも、生産技術とラインビルダーとしての現場知見を活かしながら、お客様の将来のものづくりを一緒に考えていきます。