工作機械のFMSとは?多品種少量生産を止めにくくするライン設計の考え方
こんにちは、技術コンサルのTです。
今回は、工作機械のFMSについて書いてみたいと思います。
FMSとは、Flexible Manufacturing Systemの略で、日本語ではフレキシブル生産システムと呼ばれます。工作機械の領域では、マシニングセンタやNC旋盤などの加工機を中心に、パレット搬送、ロボット、ストッカー、工具管理、検査装置、洗浄装置などを組み合わせ、多品種少量生産に対応しやすくする自動化システムとして検討されます。
製造現場では、「加工機はあるが、ワークの着脱を人が行っている」「夜間や休憩時間に設備を動かせていない」「品種が多く、段取り替えのたびにラインが止まる」「加工後の検査や洗浄まで含めると人手が残ってしまう」といった相談があります。
FMSを考えるときに大切なのは、工作機械単体の能力だけを見るのではなく、加工前後の流れまで含めて生産ラインとして成立するかを見ることです。
ラインビルダーやFAインテグレーターに求められるのは、単にロボットを1台入れることではありません。ワーク供給、加工、搬送、バッファ、検査、異常復旧、保全まで含めて、現場で使い続けられるFMSとして設計することです。
■ 工作機械のFMSは「加工機を自動化する」だけではない
工作機械の自動化というと、まずロボットによるワーク着脱やパレットチェンジャーを思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、ワークの投入・取り出しを自動化することは、省人化や稼働時間延長に直結します。ただし、FMSとして考える場合は、それだけでは不十分です。
たとえば、加工前の素材はどの姿勢で供給されるのか。加工済みワークはどこに置くのか。品種ごとの治具や工具はどう切り替えるのか。加工後に洗浄やエアブローが必要か。寸法測定や外観確認をどのタイミングで行うのか。異常が出たとき、どこまでラインを止めるのか。
こうした条件が整理されていないと、ロボットや搬送装置を導入しても、結局は作業者が頻繁に介入するラインになってしまいます。
FMSは、加工機を自動化する設備ではなく、加工を中心とした一連の流れを自動化・省人化するライン設計だと考える必要があります。
■ FMSでよくつながる設備と工程
工作機械のFMSでは、次のような設備や工程が組み合わされます。
・マシニングセンタ、NC旋盤などの工作機械
・パレットチェンジャー、パレットプール
・ロボットによるワーク搬送、マシンテンディング
・素材ストッカー、完成品ストッカー
・治具、チャック、クランプ装置
・工具管理、工具寿命管理
・洗浄、エアブロー、バリ取り
・寸法測定、外観検査
・AGV、AMR、コンベアなどの工程間搬送
・生産指示、レシピ、加工プログラムの管理
ここで重要なのは、それぞれの設備を個別に選ぶのではなく、品種、ロット、タクト、段取り替え、保全性を含めて全体をつなげることです。
たとえば、加工機の能力が高くても、素材供給が追いつかなければライン全体の能力は上がりません。ロボットが速く動いても、ワーク姿勢が安定しなければチョコ停が増えます。パレット数を増やしても、工具交換や測定の流れが整理されていなければ、夜間運転の途中で止まってしまうこともあります。
FMSでは、設備単体のスペックよりも、設備同士の受け渡し条件や制御連携が生産性を左右します。
■ 多品種少量生産でFMSが求められる理由
多品種少量生産では、品種ごとにワーク形状、重量、加工面、保持位置、工具、加工プログラム、検査項目が変わります。
このとき、段取り替えを作業者の経験に頼りすぎると、自動化ラインであっても安定しません。
たとえば、加工プログラムは切り替わったが、治具の位置が合っていない。工具は登録されているが、寿命管理が不十分で夜間に加工不良が発生する。ロボット側の把持条件と工作機械側のクランプ条件が合っていない。こうした小さなズレが、立ち上げ後の停止や品質トラブルにつながります。
FMSでは、品種が変わることを前提に、レシピ管理、治具設計、ワーク識別、インターロック、異常表示を設計段階から考える必要があります。
多品種少量生産に対応するためには、「いかに速く加工するか」だけでなく、「品種が変わっても正しい条件で再開できるか」が重要になります。
■ FMS構想で最初に整理したい3つの条件
FMSを検討する際、最初に整理したい条件は大きく3つあります。
1つ目は、対象ワークの範囲です。
最大・最小サイズ、重量、材質、加工面、把持できる位置、傷をつけてはいけない面などを整理します。ここが曖昧なまま進むと、ロボットハンド、治具、ストッカー、搬送姿勢の設計が後から変わりやすくなります。
2つ目は、運用したい生産パターンです。
1品種をまとめて流すのか、複数品種を混流するのか。昼間は人が段取りし、夜間は無人運転したいのか。加工後に全数検査するのか、抜き取り検査にするのか。こうした運用条件によって、必要なパレット数、バッファ、検査工程、異常時の停止方法が変わります。
3つ目は、人が関わる作業の切り分けです。
FMSといっても、すべてを完全自動化する必要があるとは限りません。素材補充、工具交換、初品確認、測定、異常復旧など、人が担当した方が安定する作業もあります。大切なのは、人が関わる作業を残す場合でも、その作業をライン設計の一部として考えることです。
■ ラインビルダー視点で見るFMSの難しさ
FMSの難しさは、工作機械、搬送装置、ロボット、検査装置、制御システムがそれぞれ異なる考え方で作られている点にあります。
加工機側では加工精度や工具管理が重要になります。ロボット側では把持位置や干渉、搬送姿勢が重要になります。搬送側では停止位置、バッファ、受け渡しタイミングが重要になります。制御側ではレシピ管理、異常表示、インターロック、稼働履歴が重要になります。
これらを別々に考えると、設備は完成しても、現場で使いにくいFMSになってしまいます。
ラインビルダーとしては、加工機を中心にしながらも、前後工程を含めた生産ライン全体を見る必要があります。FAインテグレーターとしては、異なる設備同士を安全に、分かりやすく、復旧しやすくつなぐ必要があります。設備メーカーとしては、治具、搬送、保全スペース、作業者動線まで含めて、長く使える設備にする必要があります。
■ まとめ:FMSは加工・搬送・制御を一体で考えるライン設計
工作機械のFMSは、単に加工機へロボットを付けることではありません。
多品種少量生産に対応するために、加工、搬送、治具、工具、検査、制御、保全を一体で考えるライン設計です。
FMSを検討する際は、まず対象ワーク、品種数、ロット、生産パターン、人が関わる作業、異常時の復旧方法を整理することが大切です。そのうえで、どこを自動化し、どこを半自動化し、どこを人が担当するのかを切り分けることで、現場に合ったFMSを構想しやすくなります。
Thermixでは、工作機械まわりの自動化についても、設備単体ではなく、生産ライン全体の流れ、搬送、制御、立ち上げ、保全性まで含めたラインづくりを大切にしています。工作機械のFMSや多品種少量生産の省人化をご検討の際は、加工機だけでなく、前後工程を含めたライン全体の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。