自動化ラインを止めにくくする保全性設計とは?
― 設備を「動かす」だけでなく、「使い続けられる」ラインづくりの考え方 ―
こんにちは、技術コンサルのTです。
自動化ラインを検討する際、多くの企業では「タクトタイムを満たせるか」「省人化できるか」「設備能力は十分か」といった点に注目します。もちろん、これらは設備投資を成功させるために欠かせない要素です。
一方で、量産が始まってから生産性を左右するのは、「設備が止まったときに、いかに早く復旧できるか」という視点です。
どれほど高性能な設備でも、センサの汚れやワークの位置ずれ、部品の摩耗など、小さな異常は必ず発生します。その際に短時間で復旧できる設備と、復旧に時間がかかる設備では、年間の稼働率に大きな差が生まれます。
今回は、ラインビルダー・FAインテグレーター・設備メーカーの立場から、自動化ラインを長く安定して使い続けるための「保全性設計」についてご紹介します。
保全性設計とは
保全性設計とは、設備が故障しないようにする設計ではありません。
異常が発生した際でも、安全に、短時間で、確実に復旧できるよう設備を設計する考え方です。
例えば、生産ラインでは次のような事象が日常的に発生します。
- ワークが搬送途中で停止する
- センサが汚れて検知できない
- 治具の位置がわずかにずれる
- 消耗品の交換が必要になる
- 品種切替後に微調整が必要になる
このような場面で、異常箇所がすぐ分かり、安全に復旧でき、点検や交換作業も短時間で終えられる設備であれば、生産への影響を最小限に抑えられます。
つまり、「止まらない設備」を目指すだけではなく、「止まってもすぐ戻せる設備」を目指すことが重要なのです。
保全性が低い設備で起こりやすい問題
保全性が十分に考慮されていない設備では、まず異常箇所の特定に時間がかかります。
異常表示が大まかだったり、センサや工程の状態が分かりにくかったりすると、保全担当者は設備の中を確認しながら原因を探すことになります。
また、消耗品交換や点検作業がしにくい設備も少なくありません。
例えば、センサ交換のために複数のカバーを外さなければならない、工具が入りにくい場所に部品が配置されている、給脂箇所まで手が届きにくいといったケースです。
一つひとつは小さなことでも、量産が始まると保全作業の負荷が積み重なり、設備停止時間の増加につながります。
設備メーカーとしては、設備を完成させることだけでなく、「保全しやすい設備」を設計することも重要な役割です。
設計段階で確認したい4つのポイント
保全性は設備完成後ではなく、構想設計や設備設計の段階から考える必要があります。
① 異常時の停止方法
異常が発生した際に、ライン全体を停止するのか、一部工程だけ停止するのかを整理しておくことが重要です。
異常内容に応じた停止範囲を設計しておくことで、生産への影響を最小限に抑えられます。
② ワークの見える化
異常停止した際、どこにワークが残っているのかが分かることも重要です。
搬送途中や治具上にワークが残った状態で復旧すると、二重投入や設備干渉につながる可能性があります。
設備状態を分かりやすく表示することで、復旧時間を短縮できます。
③ 点検・交換しやすい設備配置
センサやシリンダ、吸着パッドなどの消耗品は、定期的な交換が必要です。
そのため、工具が入りやすいか、作業姿勢に無理がないか、保全スペースは十分かといった点まで考慮した設計が求められます。
設備レイアウトや保全動線も、生産性に直結する重要な設計要素です。
④ 制御設計との連携
保全性は機械設計だけでは実現できません。
異常内容を分かりやすく表示するHMI、異常履歴の保存、適切なインターロック設計など、制御設計も保全性を大きく左右します。
設備が「なぜ止まったのか」がすぐ分かるだけでも、現場での復旧時間は大きく短縮できます。
既設設備の改造ではさらに重要
新規ライン以上に保全性が重要になるのが、既設設備を活用したライン改造です。
既設ラインには作業者動線や保全スペース、配線・配管ルートなど、多くの制約があります。
新しい設備を追加した結果、保全スペースが狭くなったり、点検口の前に搬送設備が配置されたりすると、日常点検そのものが難しくなってしまいます。
そのため現地調査では、「設備が設置できるか」だけでなく、「設備を保全できるか」という視点で確認することが欠かせません。
これは設備単体では見えない、ライン全体を考えるラインビルダーならではの視点です。
まとめ
自動化ラインでは、設備能力やタクトタイムだけでは、本当の使いやすさは決まりません。
量産では、小さな異常や点検作業の積み重ねが設備稼働率を左右します。
だからこそ、異常時の停止方法、ワークの見える化、点検しやすい設備配置、制御設計まで含めた保全性設計が重要になります。
ラインビルダーやFAインテグレーターに求められるのは、設備を組み合わせることだけではありません。機械設計、制御設計、搬送設計、保全性、現場運用を一体で考え、生産ライン全体を最適化することです。
Thermixでは、設備を「納める」ことではなく、お客様が長く安心して使い続けられるラインづくりを目指しています。自動化やライン改造をご検討の際は、設備の能力だけでなく、「保全しやすさ」という視点もぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。