パキスタン自動車工場|サイドボディ組立ライン自動化
パキスタンの自動車工場で、新規車種のサイドボディ組立工程を構築するプロジェクトです。
本ラインは、ロボットによる自動溶接工程と人作業による手打ち溶接工程を組み合わせた混成ラインとして構想しました。
設備構成は、5つの組立工程と検査治具を含めた6設備。
完全自動化ではなく、現地の生産条件や生産量を踏まえ、自動化と人作業の最適なバランスを取る生産設備として設計しています。
テルミックスはラインビルダーとして、構想・設計・制御・施工までを統合したターンキー案件として本プロジェクトに参画しました。
第1部
構想力と制御インテグレーションでラインを成立させる
― 設計・電気パート ―
ここではまず、設計と電気制御の視点から、このライン構築のポイントをご紹介します。
本ラインの設計で最も重要なテーマは、ロボット自動化と人作業の共存でした。
自動車の生産設備ではロボットによる自動化が一般的ですが、海外工場では生産量や投資バランスの観点から、人作業を組み合わせた柔軟なライン構成が求められるケースも多くあります。
今回の設備にも人による溶接工程が含まれており、設計では作業者の姿勢や安全性を考慮した治具構造の検討が欠かせませんでした。
溶接ガンの進入方向や角度、作業時の姿勢を細かく検証し、無理のない作業ができる設備構造を構想していきます。ロボット中心のラインとは異なり、人の作業性を前提に設計することは、生産技術として非常に重要なポイントです。
また設計では、仕様書どおりでは成立しないケースに直面することも少なくありません。
ロボットの動作範囲、溶接ガンの干渉、チップドレッサーの配置、複数溶接ガンの自動交換、タクトタイムといった制約が重なるためです。
その際は仕様をそのまま形にするのではなく、
「どうすれば成立するか」
「よりシンプルな構成にできないか」
という視点で構想を見直していきます。
少し専門的な話になりますが、この様な工程こそ設備設計の面白さでもあり、苦労する所でもあります。
本案件で特に難易度が高かったのは、2台のロボットがボディ左右を交互に生産する工程でした。
限られたサイクルタイムの中で動作を成立させる必要があり、ロボットシミュレーションを使いながら配置や治具構成を何度も見直していきます。
正直なところ、この工程はかなり頭を使いました。
ただ、干渉なく動作が成立し、タクトに収まる構想が見えた瞬間は設計者として手応えを感じる場面でもあります。
さらに別工程では、当初2治具構成だった設備を1治具構成へ変更する構想も検討しました。
設備スペースやコストの面ではメリットがありますが、タクトタイムを維持するためにはより精密な検討が必要になります。
こうした構想検討を積み重ねながら、設備として成立するライン構成を組み立てていきました。
電気制御の面では、溶接電源の安定化が大きなテーマとなりました。
手打ち溶接工程が制御盤から離れた位置にあり、電圧降下によって溶接電圧が低下する問題が発生したためです。
そこで電源ケーブルの追加や元電圧の昇圧などの対策を行い、安定した溶接条件を確保しました。
またタクトタイム向上のため、治具のインターロック制御の最適化にも取り組んでいます。
当初は安全重視の厳しいインターロック構成でしたが、メカ設計と連携しながら必要条件を整理。図面だけでなく実機確認を行いながら制御ロジックを調整していきました。
溶接精度の調整も簡単ではありません。
打点位置、角度の微修正や微調整を繰り返しながら精度を追い込んでいきます。ロボットから遠い打点では、ティーチング時と100%速度時で数ミリ程度の振れが出ることもあり、現場での微調整が必要でした。
さらに設備を実際に動かすと、作業性や運用面での改善ポイントも見えてきます。
作業を最適にする為の動作変更や表示ランプのタイミング調整などを行いながら、ライン全体の完成度を高めていきました。
ちなみに現地では、日本から送ってもらったカップラーメンにかなり助けられました。
海外現場ではこうしたサポートもありがたいものです。一方で、砂ぼこりが多くレーザースキャナーの検出面がすぐ汚れてしまい、頻繁に清掃が必要だったのはパキスタンならではの苦労でもありました。
それでも、構想・設計・制御を一体で考えながらラインを成立させていく。
こうした取り組みこそが、テルミックスがラインビルダーとして大切にしている設備インテグレーション力です。
自動化と人作業を最適に組み合わせ、現地環境でも安定して稼働する生産設備を構築する。
それが今回のパキスタン自動車工場のライン構築で実現した価値と言えるでしょう。
(つづく)