車種追加を“止めずに成立させる”総力戦 ―【前半】
長年の信頼関係を土台に、Win-Winで仕様をつくり上げる
岡山を本拠地に国内はもちろん世界中——テルミックスは大小さまざまな工場自動化に携わってきました。今回ご紹介するのは、マレーシアで自動車3車種生産を行っているラインに、新車種を追加する改造のターンキー案件です。
本案件のお客様とは、これまでにも複数の設備案件をご一緒してきた長年のパートナー。
日々の生産を支える設備を任せていただく中で、
「困ったときはまず相談する」
「一緒に考えて最適解を探す」
そんな関係性が自然と築かれてきました。
今回の新車種追加案件も、単なる設備改造ではなく、将来を見据えた生産体制づくりとして、顧客とテルミックスが協業する形でスタートしています。
■ 汎用ラインだからこそ、設計段階での“すり合わせ”が価値になる
本ラインは、IAIロボシリンダを用いて車種切替を行う自動化ラインです。
IAIロボシリンダは、位置・速度・加減速を電気的に細かく制御できる電動アクチュエータで、多品種・汎用生産に強みを持ちます。一方で、ストローク制限や干渉条件が厳しく、設計段階での成立性検討がプロジェクト全体の品質を左右します。
今回の案件は、改造製作のボリューム自体は大きくありませんでしたが、その分、
- 設計確認
- 現地条件の把握
- 仕様の細かなすり合わせ
にしっかり時間をかけることが重要でした。
ここを丁寧に行うことが、後工程の手戻りを防ぎ、結果としてお互いに負担を減らす=Win-Winにつながると考えていたからです。
■ 仕様書は“出発点”。成立させるために一緒に考える
設計を進める中で見えてきたのは、仕様書の内容をそのまま当てはめるだけでは、実機として成立しない部分があるという事実でした。初期仕様としては致し方ありません。
ガン干渉やIAIロボシリンダのストローク条件など、実際の動作を想定すると調整が必要な箇所がいくつもありました。
こうした状況に対してテルミックスが取ったのは、
「どうすれば現実の生産ラインとして成立するかを、一緒に考える」
というスタンスです。
3Dデータ上で動作姿勢を検証し、新車種対応の構想を一つずつ作り込む。
成立する構想が見えてきたら、それを資料として整理し、
「この構成であれば成立しますが、いかがでしょうか」
と相談ベースで提案しました。
■ “決める”のではなく、“合意して決める”。だから後戻りしない
本案件では、関係者も多く、仕様や承認内容について慎重に確認を進める必要がある場面がいくつかありました。
その分、合意形成には一定の時間が必要でしたが、これは「時間がかかった」のではなく、「納得できるまで丁寧に詰めた時間」だったと捉えています。
たとえば、小部品仮置台の改造では、仕様書に記載された内容が実際のスペース条件では成立しないことが判明しました。
そこで、成立する代替案を提示し、運用面も含めてお客様と一緒に検討。
結果として、現場で無理なく使える仕様に落とし込むことができました。
また、工事時期の前倒しや、一部内容のスケジュール再調整など、プロジェクト全体の計画変更もありましたが、その都度、
「今、何を優先すべきか」
を共有しながら、柔軟に対応しています。
■ 寄り添うからこそ、言うべきことは言う。それがWin-Winの関係
テルミックスが大切にしているのは、
寄り添いながらも、課題は正直に伝えることです。
ロケーション変更などの仕様変更は、必ずお客様の合意を得たうえで対応。
一方で、将来の設備運用に無理が残ると判断した要求については、その理由を説明し、別の選択肢を提案しました。長期的にメリットのある選択をするため、こうしたことは大切です。テルミックスのこのスタンスで、多くのお客様と長年の関係性が創れてきたと思います。
結果として、「安心して使い続けられる設備」、「無理のない、品質を担保できる設備」をつくることができました。
■ 設計の仕事は、“一緒に成立させる”こと
本案件は、改造規模こそ大きくありませんが、設計者にとっては考える要素が非常に多い、密度の高い案件でした。
仕様書を起点にしながらも、現実の生産ラインとしてどう成立させるかを、お客様と一緒に考え、合意し、形にする。
派手な成果ではありませんが、こうした地道な積み上げこそが、
ラインを止めずに新車種を追加し、将来の生産にもつながる力になります。
それが、テルミックスのラインビルダーとしての価値です。
(つづく)